「入社後にしたいこと」の正しい書き方とは？｜企業の意図と答え方を徹底解説【例文つき】

「入社後にしたいことって何を書けばいい？」「入社後にしたいことが思いつかない…」と感じる大学生は少なくありません。

企業がこの質問をする理由は、志望度・早期活躍の可能性・キャリアの方向性を知るためです。

本記事では、企業の意図に沿った答え方、入社後のイメージを作るための3ステップ、専門的経験と普遍的経験の整理法、そして職種別の例文まで丁寧に解説します。

この記事を読めば、抽象的な願望ではなく、企業に刺さる「入社後にしたいこと」を具体的に書けるようになります。

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「入社後にしたいこと」は未来の目標ではない

エントリーシートの「入社後にしたいこと」は、あなたの夢や理想像を自由に語るための設問ではありません。企業が知りたいのは、「入社してから数年間で、どの部署でどのような役割を担い、どの程度の成果を出し、会社にどのような形で貢献してくれるのか」という具体的な活躍イメージです。

採用担当者は、「この学生を採用すると、自社の事業や組織にどのようなプラスの影響が生まれるか」を知りたいと考えています。

そのため、「成長したいです」「社会に貢献したいです」といった抽象的な言葉だけでは十分ではありません。

企業が直面している課題や今後の方向性をふまえたうえで、自分がどのように行動し、どのような成果を目指すのかを具体的に示すことが重要になります。

企業が「入社後にしたいこと」を聞く意図

理由①入社意欲（志望度の高さ）を確認したいから

一つ目の意図は、その学生がどれだけ本気で自社に入りたいと考えているかを確かめることです。

入社後の行動を自分なりに具体的に描けている学生は、多くの場合、その企業について時間をかけて調べています。企業説明会に参加したり、採用ページやIR資料を読み込んだり、OB・OG訪問で現場社員の話を聞いたりしているはずです。

企業の側から見ると、「入社後にしたいこと」が具体的に書かれているほど、「ここまで情報を集めているということは、志望度が高いのだな」と判断しやすくなります。

入社後の動きを詳細に描けていること自体が、その企業に対する本気度のサインになっていると言えます。

②早期に活躍できるか（ポテンシャル）を確認したいから

二つ目の意図は、その学生が入社後どのくらいのスピードで戦力になりそうかを見極めることです。

企業にとって採用は投資であり、「どの部署でどの程度の育成期間が必要か」「どれくらい早く成果を出してくれそうか」という観点を持っています。

入社後の行動を具体的に語れる学生は、長期インターンや実務に近いアルバイト、研究プロジェクトなどを通じて、ビジネスの現場に近い経験をしていることが多いです。そうした経験から得た感覚やノウハウを踏まえて、「入社したらこう動きたいです」と説明できている状態です。

企業はその様子を見て、
「自社の業務に近い経験を持っているので教育コストが低そうだ」
「一定の再現性を持って成果を出してくれそうだ」
と判断します。

理由③企業の事業の方向性とキャリア観の適合度（ミスマッチの防止）を確認したいから

三つ目の意図は、学生が描いているキャリアの方向性と、自社が提供できるキャリアパスが合っているかを確認することです。

「入社後にしたいこと」を書くときには、自分の過去の経験や価値観、将来の方向性が自然とにじみ出ます。

企業はその内容を読み取りながら、
「この学生の志向は自社の事業領域や今後の戦略と重なっているか」
「うちで経験を積むことが、その人にとっても筋の通ったキャリアになりそうか」
を考えます。

例えば海外事業はあるもののそこまで注力していない企業に対して、「海外駐在をしたいです」と強く書き過ぎると、どうしてもミスマッチの可能性が高くなります。

一方で、事業内容や今後の方針を理解したうえで、過去の経験から一貫したキャリアの筋道を描けている学生は、「意欲的に長く働いてくれそうだ」とポジティブに評価されます。

大学生が「入社後のイメージ」を持てない2つの理由

「入社後にしたいこと」の解像度が低いのは、多くの場合、以下の2つの理由に起因します。

理由①企業の事業内容と働き方の理解不足

最も多いのがその企業の事業内容と働き方の両方について、立体的なイメージを持てていないケースです。

まず、事業内容についての理解が表面的なままになっている場合が多いです。

多くの学生はその企業がどのような商品・サービスを提供しているかまでは抑えていますが、
・その企業の売上がどのように構成されているか
・主力商品や現在注力しているサービスはなにか
・その企業が今後どのような経営戦略を考えているか
といったビジネスモデルや経営の意思までは理解できていない場合が多いです。

こうした表面的であいまいな理解では、何をどう頑張ればその会社に評価してもらえるかの勘所がつかめず、いまいち入社後のイメージが持てません。

次に、その会社で働く人の一日やキャリアの進み方についての情報も不足しがちです。

本来であれば、企業説明会やOB・OG訪問などを通じて
・新卒1〜3年目にどのような業務を任されることが多いのか
・いつ頃、最初の役職がつくことが多いのか
・どのタイミングで中間管理職になるケースが一般的なのか
・新卒入社組と中途入社組の比率がどの程度なのか
といった情報を聞いておくと良いのですが、ほとんどの学生がここまで情報を仕入れられていません。

こうした情報がないと、「数年後の自分がどのポジションで、どのような責任を持って働いているか」という中長期の姿を描きにくくなります。

理由② 経験不足によるリアルなイメージの欠如

もう一つの大きな理由は、その企業で求められる経験を自分の中に十分蓄えられていないか、蓄えていてもその価値に気づけていないことです。

企業が求める経験は、大きく二つの種類に分けられます。一つはその業界特有のスキルや知識に関わる「専門的な経験」であり、もう一つは業界を問わずどこでも必要とされる「普遍的な経験」です。

専門的な経験とは、その業界特有の知識や技術、ノウハウにつながる経験のことを指します。

例）
●投資銀行の場合：金融商品の取り扱い、企業価値評価、まとまった金額の運用など、金融に直接関わる経験
●IT企業の場合：Webマーケティングツールを用いて広告の効果を測定した経験、外部の専門会社に業務を委託して進捗や品質を管理した経験
●メーカーや商社の場合：海外市場の調査に関わった経験、サプライチェーン全体の流れを追いかけたプロジェクトへの参加経験

このような専門的な経験は、通常の講義や一般的なアルバイトだけでは得にくく、どうしても長期インターンや一部のプロジェクト型の活動に限られます。

そのため、多くの学生は「その企業の現場で必要とされる専門的な経験の幅」がそもそも不足しており、「この会社のこの業務でこう貢献できます」と言おうとしても、イメージを支える具体的な素材が足りない状態になりやすいです。

これに対し、普遍的な経験とは業界が変わっても共通して求められる仕事の進め方に関する経験です。

例）
・最終的な売上やKPIといった数値目標から逆算して中間目標を設定し、その達成に向けて計画を立てて動いた経験
・仮説を立てて実行し、結果を検証して改善策を練り直すサイクルを何度も回した経験
・複数人で役割分担をしながら一つの成果物を作り上げた経験、顧客や利用者と相互の条件を調整しながら合意を形成した経験

実際には、こうした普遍的な経験は大学生活の中にも多く含まれています。サークルでのイベント運営や学園祭の企画、ゼミでの共同研究、アルバイトでの売場改善やシフト調整、SNSアカウントの運用などはすべて、やり方次第でビジネス経験として語ることができます。

しかし多くの学生は、それらを単なる「サークル活動」「アルバイトの一場面」としか捉えておらず、「企業で求められる普遍的な経験」として価値づけできていないことが多いです。

結果として、専門的な経験は物理的に不足し、普遍的な経験は実際には存在しているにもかかわらず、その意味に自分で気づけていない状態になります。

この二つが重なることで、「自分はこの企業に入ったあと、何を武器にどの場面で力を発揮できるのか」というイメージがぼやけてしまい、「入社後にしたいこと」を具体的なレベルまで落とし込むことが難しくなります。

「入社後にしたいこと」を具体的に書くための3ステップ

「入社後にしたいこと」を企業の意図に沿って具体的に書くためには、いきなり文章を書き始めるのではなく、頭の中の情報を段階的に整理していくことが大切です。ここでは、次の3ステップで考える方法を紹介します。

①企業・業界の現状とキャリアの「王道ルート」をつかむ
②必要とされる専門的経験と普遍的経験を棚卸しする
③行動計画と成果イメージを、企業の言葉遣いで言語化する

順番に見ていきます。

【ステップ1】企業・業界の現状とキャリアの「王道ルート」をつかむ

最初のステップは、「この会社でどんな事業が動いていて、そのなかで人はどのようなキャリアをたどるのか」という全体像をつかむことです。ここでは机上の情報だけでなく、実際に働いている人の話もセットで集めることがポイントになります。

まずは企業・業界の情報を整理します。

企業については、主力事業や売上構成、直近のニュース、競合他社との違い、経営方針などを確認します。「どの事業で稼いでいるのか」「現時点でどこに投資をしているのか」といったビジネスモデルのイメージを持てると、入社後に自分が関わりそうなテーマも想像しやすくなります。

業界については、成長分野や縮小分野、規制や技術動向などのトレンドを押さえ、「この業界ならではの構造的な課題は何か」を考えます。

そのうえで、必ず押さえておきたいのが「新卒1〜3年目のリアル」と「その会社の王道キャリア」です。ここはOB・OG訪問が非常に有効です。可能であれば、次のような点を具体的に聞いてみてください。

・新卒1〜3年目には、どのような業務を任されることが多いのか
・毎日どんなタスクにどれくらい時間を使っているのか
・どの指標（KPI）で評価されているのか
・最初の役職がつくタイミングや、中間管理職になる時期のイメージ
・現場の管理職における新卒入社組と中途入社組の比率

こうした情報を集めることで、
「入社して数年間でどのようなポジションを経験するのか」
「その先にどのようなキャリアの王道ルートがあるのか」という、中長期のイメージを持てるようになります。

このステップで、企業の課題とキャリアパスの両方を立体的に捉えられると、次のステップ以降で「自分はそこでどう貢献できるのか」を考えやすくなります。

【ステップ2】必要とされる専門的経験と普遍的経験を棚卸しする

二つ目のステップは、「この企業で働くうえで必要になりそうな経験」と「自分がすでに持っている経験」を結びつけることです。ここでは、すでに見てきたように、企業が求める経験を「専門的な経験」と「普遍的な経験」の二つに分けて考えると整理しやすくなります。

まず、ステップ1で調べた事業内容や業務フローをもとに、「この会社で求められそうな専門的経験」と「どの部署でも共通して必要になりそうな普遍的経験」を一度書き出してみてください。

【専門的な経験の例】
・金融業界なら：株や債券など金融商品の取引に関わる経験、企業の財務データを分析する経験
・IT・Web業界なら：SNSやWebサイトのデータを実際に分析する経験、広告配信ツールを触ってみる経験
・メーカー・商社なら：海外市場について調べる経験、サプライチェーンの構造を自分なりに整理する経験

こうした専門的な経験については、学生の段階で完璧に身につける必要はありません。ただ、「まったく知らない」状態のままにしないことが大切です。

たとえば少額でも株を取引してみる、海外に何かを調べに行ってみる、自分でSNSのデータを分析してみる、といった「小さく触ってみる行動」をしておくだけでも、入社後のイメージの解像度は大きく変わります。

次に、普遍的な経験についても整理します。ここには、どの業界・職種でも共通して重視される仕事の進め方が含まれます。

・最終的な数値目標から逆算して中間目標を設定し、計画を立てて動いた経験
・仮説を立てて実行し、結果を検証して改善策を考えた経験
・複数人で役割分担をしながら一つの成果物を作り上げた経験
・利用者や顧客、ステークホルダーと条件を調整して合意に至った経験

こうした経験を、サークルのイベント運営、ゼミの共同研究、アルバイトでの売上改善やシフト調整、SNSアカウントの運用など、自分の過去の経験の中から「これは普遍的なビジネス経験として使えそうだ」と思うものを探します。単なる「サークル活動」「バイトの一場面」としてではなく、「企業で求められる普遍的な経験」として価値づけし直すイメージです。

このステップのゴールは、「この企業では、こういう専門的経験と、こういう普遍的経験が求められそうだ」「そのうち自分はこれとこれをすでに持っていて、ここは今後伸ばしていきたい」というマップを描くことです。ここまで整理できると、「入社後にしたいこと」を語るときの土台が一気にしっかりします。

【ステップ3】企業の言葉遣いで「行動」と「成果」を言語化する

最後のステップは、これまで整理してきた情報をもとに、「自分は入社後にどのように動き、どのような成果を目指したいのか」を具体的な文章に落とし込むことです。このとき大事になるのが、行動と成果をセットで書くことと、その会社の人が使いそうな言葉遣いを意識することです。

まず、抽象的な意欲だけで終わらせず、できるだけ具体的な行動レベルまで落としていきます。
・「チームを鼓舞したいです」ではなく、「○○というデータ分析ツールを導入し、月2回のペースで数値を振り返るミーティングを企画・運営したいです」と書く
・「お客様を喜ばせたいです」ではなく、「お問い合わせ対応のフローを見直し、平均対応時間を半年で10％短縮することを目標にしたいです」と書く

さらに、「その会社の人が普段使っていそうな言葉」で説明することも意識します。

採用ページやIR資料、事業紹介スライドなどを読むと、その企業がよく使う言葉や重視している指標が見えてきます。たとえば「ARR」「LTV」「解約率」「顧客満足度」「店舗あたり売上」といった用語や、「顧客課題」「価値提供」「事業グロース」といったキーワードです。

そうした言葉を、自分なりの言葉に置き換えながらも適度に取り入れていくと、「この学生はうちのビジネスの文脈で物事を考えようとしている」と伝わりやすくなります。ただし、流行りの横文字を並べることが目的ではありません。あくまで、「企業の課題」「自分の経験」「入社後の行動」の三つが一つのストーリーとしてつながるように書くことが大切です。

この三つのステップを踏むことで、「入社後にしたいこと」は単なる願望ではなく、「企業の現状」と「自分の経験」に根ざした、具体性と説得力のあるプランに変わっていきます。

書いてはいけないNGな例とOKな例

「入社後にしたいこと」を記述する際、多くの学生が陥りがちなのが、抽象的で自己中心的な表現です。具体的な課題への貢献を示す「OKな例」と、企業への貢献度が低い「NGな例」を比較しながら、その違いを理解しましょう。

NGな例：抽象的・自己中心的な記述

たとえば「幅広い経験を積み、将来は社会貢献したいです」という表現は、一見すると前向きで意欲的に見えます。しかし企業側からすると、「具体的にうちの会社でどのように貢献してくれるのか」が全く分かりません。

この回答がNGである理由は、企業の課題解決や業務内容と結びついておらず、自己成長だけが目的になってしまっている点にあります。どの会社にも当てはまる抽象的な“夢”にとどまっているため、志望度や貢献意欲を読み取ることもできません。

企業は「学生の夢を叶える場所」ではなく、「事業に貢献してくれる人材」を採用したいと考えています。したがって、企業の課題に直結しない自己目的的な記述は、評価につながりにくいと言えます。

OKな例：具体的・貢献志向の記述

一方で、OKな例として「長期インターンで培ったSaaS営業のスキルで、初年度で地方企業10社の新規契約獲得に貢献したい」という表現は、極めて具体的で説得力があります。

この回答が評価される理由は、以下の3つの重要な要素が含まれているからです。

①貢献できる具体的な根拠（スキル）があること： 「長期インターンで培ったSaaS営業のスキル」という、経験に基づいた即戦力性をアピールできています。

②具体的な行動と成果目標があること： 「初年度で地方企業10社の新規契約獲得」という具体的な目標を掲げることで、入社後の活躍イメージを採用担当者に強く持たせることができます。

このように、ESで書くべき「入社後にしたいこと」は、あなたの経験（長期インターンなど）に基づいた具体的な行動計画であり、それが企業の具体的な課題解決に直結していることが、高評価を得るための鍵となります。

【職種別】「入社後にしたいこと」の具体的な例文集

ESで高評価を得るためには、志望職種の業務フローや成果目標を理解した上で記述することが重要です。長期インターンで経験を積んだ学生が書ける、具体的で説得力のある例文を紹介します。

営業職の例文

マーケティング職の例文

企画職/事業開発職の例文

エンジニア職の例文

ビジネスの解像度を上げたければ長期インターンで経験を積むのがおすすめ

「入社後にしたいこと」を具体的に書ける学生は、例外なくビジネスの解像度が高いという共通点があります。
事業の仕組み、人が働く現場、KPIの動き、上司・同僚とのコミュニケーション、意思決定の基準――こうした情報は、机上の企業研究だけではなかなか見えてきません。

その解像度を最も効率よく高められる手段が、長期インターンです。

長期インターンでは、企業の一員として実際の業務に入り、目標数字を追いながら仕事を進める経験を積めます。自分の行動が売上や成果にどのように影響するのかを肌で理解できるため、「この会社なら入社後にこう動けそうだ」というイメージが一気に立体的になります。

さらに、営業・マーケティング・企画・エンジニアリングといった職種ごとの業務フローやKPIにも触れられるため、専門的経験と普遍的経験の両方を実践的に蓄積できます。これはESや面接で語る「入社後にしたいこと」の説得力を高める上で、大きな強みになります。

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