【コンサル就活の出口戦略】マッキンゼー出身起業家×BCG出身経営者: 彼らはどのようにファームを飛び出たか?

「コンサルティングファームで基礎的なビジネススキルを磨きつつ、やりたいことを見つけて自立したい。」コンサル人気が高まり続ける昨今の就活市場では、コンサル=ハイクラスキャリアへの入口という解釈が広がっています。

実際に成長著しい日本企業の経営陣を見ると、マッキンゼー、BCG、ベインといった戦略コンサルBIG3を筆頭に、コンサルティングファーム出身者が並びます。

こうした背景を受けてコンサルティングファームとそこへの就活についての理解はかなり進んでいますが、他方で「優秀な人材がどのようにやりたいことを見つけたか」「自立に向けてコンサルタント期間をどのように過ごしたか」といった出口戦略についてはまだまだ知られていません。

そこで今回はマッキンゼー出身の起業家とBCG出身の経営者をお呼びして「どのようにコンサルティングファームを飛び出したか」を語っていただきました。

プロフィール

パネラー 草間亮一 株式会社MICIN SVP

2012年にマッキンゼー東京支社に入社。1年間のニュージャージー支社勤務を経てMICINの創業メンバーに。マッキンゼーでは主に製薬や医療機器など、ヘルスケア分野を担当。戦略立案だけでなく、IoT等のデジタルツールを用いたbeyond the pillの取組など、幅広いプロジェクトを経験。京都大学大学院工学研究科卒。

パネラー 大植択真 株式会社エクサウィザーズ 取締役

2013年、株式会社ボストンコンサルティンググループに入社。事業成長戦略、企業変革、DX推進、新規事業立上げなどの多数のプロジェクトに従事した後に、2018年に株式会社エクサウィザーズに入社。2019年4月より、AI事業管掌執行役員として年間数百件のAI導入・DX実現を担当。2020年6月に取締役就任。兵庫県立大学客員准教授。京都大学工学部卒業。京都大学工学研究科修了(都市計画、AI・データサイエンス)。

1. マクロな目線で自分の価値を高めた結果スタートアップへ

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 コンサルを経てスタートアップに移籍するルートに注目が集まる

ーコンサルタントのキャリアについて教えてください。

草間さん: まずキャリアに関しては、
①コンサル業界にずっと残る選択をする方、
②スタートアップに行く方、
③スタートアップ以外のキャリアを選ぶ方
の3つに分類できると思います。

マッキンゼーの場合、スタートアップに行くのが最多で80-90%、業界に残るのが同期の5%、スタートアップ以外のPEとかヘッジファンド、VCに行くのが5-10%のイメージです。

大植さん: マッキンゼーはスタートアップに行く人は多いですよね。BCGも最近はスタートアップに行く人は増えていて、同期の半分程度が移籍しています。BCGには、プロのコンサルティングを突き詰めたい、またはPEファンドなどのアドバイザリーに進む方も多かった印象があります。

 業界の拡大に伴い、個人の希少性をいかに担保するかが争点に

草間さん: マッキンゼーからスタートアップに移籍する人が多いという話には、日本のコンサルティング業界の特有の事情が絡んでいます。すなわち業態としてのニーズは上がっているが、業界内部での人材の希少性は下がっているという話です。

業態としてはコンサルティングのニーズが高まっているので、どんどん従業員数も増えていますし、GDP比で見るとアメリカとドイツに比べて、日本のコンサルティングのGDP比率は低いと言われているので、コンサルティング業界が伸びる余地は大きいです。

一方で裏を返せば、業界の人口も増えているので、結果として中にいる人材の希少性とか出せる付加価値の差分は減っています。その結果、マッキンゼーからスタートアップに行く人も増えているのかなと思います。

大植さん: コンサルティング業界に残る人は、コンサルティングが知的な刺激に溢れていて難しい課題に対してチャレンジできる、大きな経営インパクトを達成できる、アドバイザリーキャリアが性に合っているみたいな人が多いと思います。もちろんこれは決してどちらが良いという話ではなくて、その人の相性にあった選択がなされていることかと思います。

ドイツ等の海外諸国と比べると日本のコンサルティングマーケットはまだまだポテンシャルがあって、今後も伸びる印象があります。なので人材としては増え続ける予定で、裏を返すと希少性は下ってくるので、マクロな目線で見て自分の価値やキャリアをどうするか考えた方が良いですね。

 コンサルティングファームに集まるのは「モラトリアム人材」: 優秀な学生がやりたいことを探しに来る

―そもそもコンサルティングファームにはどのような学生が集まるのでしょうか?

大植さん: まだ自分でやりたいことが決まっていないけれども、すごく優秀な方が集まっているイメージがありますね。入口となる動機は、新卒時点では、経営や新規事業開発などの仕事に魅力を感じて入る方が多い感じがします。

草間さん: いわゆる「モラトリアム人材」ですね。

大植さん: 私がいた時から、コンサルタントはファームで働いてスキルを身につけて、やりたいことを見つけて自立していくといった感じでしたね。やりたいことが見つかった人の中で、ファームに残る人とスタートアップに行く人が分かれていく印象です。

根本的には成長意欲が高く、学習するのが好きだという方。最初はモノを知らなくても、1教えれば10学ぶ人が多かったです。厳しい環境で自分のステージを高めたいというのとそれを実現するのに必要な”戦略的学習力”は共通して備わっていました。

草間さん: 加えて、表に見える部分で言うと「素直」な人が多いですね。素直にフィードバックを受けとめて、素直に自分を成長させられる人が多い気がしています。

2. 「人のご縁」と「好奇心」からコンサルティングファームに入り、飛び出る

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 「ご縁」で動いたキャリア: 人に惹かれてマッキンゼー、そして起業家へ

ー草間さんはなぜマッキンゼーに入社したのですか?

草間さん:「マッキンゼーで働きたい」という想いがあったからです。

実は学部3年生の時に就活で失敗し、流れに任せて大学院に入りました。その時にお世話になった研究室の先生と研究員がマッキンゼー出身で、本当に素晴らしい方々でした。これがマッキンゼーとの最初の出会いです。

こうした方々と一緒に仕事をしていると楽しいというのが実感としてあり、「それを社会人になってからも続けたい」と思ったため、マッキンゼーに入社しました。具体的に起業したいからトレーニング機関としてマッキンゼーを選ぶとか、コンサルティングに憧れてということよりも、「人」で選んだ次第です。

ーでは、どのようなプロセスで起業することを決めましたか

草間さん: 前提として、私は4人で会社を創業したのですが、その内、代表の原と私の2人がマッキンゼー出身です。私たちはマッキンゼー時代に出会い2,3回プロジェクトを一緒にしたことがあります。そこでマッキンゼー在籍時に「医療の世界を、テックを使って改善する会社を立ち上げよう」というところまでまとまりました。しかし当時私たちは二人ともビジネスサイドにいて、テックを扱えなかったのですね。そのため、一度CTOを探そうと言って解散しました。

そこからはマッキンゼーでの仕事を進めながら、起業の準備をしました。東京オフィスからニュージャージーオフィスに移籍し、働いている際に、ニューヨーク在住のテックの知識を持つ日本人と出会いました。彼に起業を持ちかけたところ承諾してくれて、しかも学生時代のインターン同期のエンジニアを連れてきてくださいました。この4人で株式会社MICINを起業することになります。

やはり「人のご縁」という部分は大きいですよね。

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 「環境」を基軸としたキャリア設計:成長を求めてBCG、そして経営者へ

ー大植さんはなぜBCGに入社したのですか?

大植さん: BCGが自分を鍛えるのに最適な環境だと思ったからです。

もともとコンサルティングファームに興味を持っており、戦略的に就活をしていました。すごく尊敬できる先輩方がマッキンゼーやBCGで楽しそうに働いているように見えたので、「自分と正確や会話のリズムといった部分で波長が合うだろう」と思ったのが興味を抱いたきっかけです。

実際にインターンに行ってみるとコンサルは素晴らしい環境だと思いました。問題解決のプロセスや議論自体が楽しく、カルチャーフィットを勝手ながら感じました。また当時私は「20代は自分を徹底的に成長させるタイミングである」と思っており、「コンサルティングファームなら自分を鍛えられそうでかつ楽しく働けそうだ」と思い入社しました。

その上でBCGを選んだのは一番経営課題に近く、社会インパクトが大きそうだと学生ながらに思ったからです。

ーでは、どのようなプロセスで起業することを決めましたか

前提として、私は大学院の時にデータサイエンスやAIの研究をやっていて、自分でPythonでプログラミングも行っており、AIの領域には大変興味を持っていました。そんな中、知人のVCの投資先であった、当時まだ社員数30名程度のエクサウィザーズを知りました。

振り返ると学生時代にAIやデータサイエンス周りを学び、BCGでビジネスを学んで、それを掛け合わせて今の領域を見つけた感じです。

3. コンサルで磨いたのは「仕事の進め方」: コンサルティングファームをどう活かすか

 20代でやりたいことを見つけ、新しいステージへ進む

ーお二方は何年目くらいで起業ないし転職することを決意されたのですか?

大植さん: 私の場合は、BCGに入って5年目に自分で事業やサービスを立ち上げる主体者のキャリアに回りたいと思い、スタートアップに転職する決断をしました。

草間さん: 実は私もコンサルタントをしていたのは4年間だけです。

3年目に初めてアメリカに行かせてもらいましたが、ぶっちゃけ日本生まれ日本育ちが海外行っても英語ができないんですよ。アメリカで英語を使ってマネージャーをやろうとすると全然英語力が足りないわけです。

アソシエイトレベルの仕事はすぐに終わっちゃうのですが、マネージャーレベルの仕事はできないということで、ある種モラトリアム期間に入ってしまったわけです。夏休み、日本に一時帰国していた際に、プロジェクトでご一緒した原さんとランチをして、起業しようかとなったのです。

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 コンサルティングファームはマインドセットを高めるために最適な場所

―コンサルタントの経験はスタートアップ経営に役立ちますか?

大植さん: 特にマインドセットが最も成長した部分だと思います。一番活きているのは「自分の2つくらい上のポジションの人が考える視点で仕事をせよ」といったような2ランクアップと呼ばれる発想ですね。

コンサルに入ると「自分ができることの視座や目標を引き上げていく」というマインドセットと「ガリガリ仕事を進める」というマインドセットが新卒の段階で身に着きます。もちろんロジカルシンキングや情報整理・情報の分析といったのも鍛えられたので役に立ってはいますがスキルよりは、仕事への向き合い方の面で生きることが多い印象です。

草間さん: 確かに。DeNA南場さんの「不格好経営」という本にも書いてありますが、コンサル時代のカルチャーとか働き方みたいな部分はありますけれども、仕事のスタンスや考え方はコンサルだろうがスタートアップだろうが使えますよね。

大植さん: そこが一番重要な部分で、たいへんBCGに感謝しています。徹底的に仕事をやり切るというベースのマインドセットが鍛えられる環境は良かったですね。

ーコンサルとスタートアップで共通するスタンスについてもう少し教えてください。

大植さん: まずインパクト思考というのがあります。社会に対して大きなことを成し遂げ、インパクトを与えたいという思考は共通する要素ですね。

草間さん: 強いオーナーシップもあると思います。自分がやらなかったら誰がやるんだ!という感じで目の前の仕事をきちんとオーナーシップを持って完了させる、そして仕事の結果も期待値を超えていくというスタンスも共通していますね。

大植さん: 現場に対するこだわりもありますね。コンサルは現場のファクトを大事にして経営戦略を考えていきます。コンサルとスタートアップで、現場や顧客を大切にしながら意思決定をしていくというスタンスも共通しているように思います。

4. 情報を得られる体質に: 学生時代から始めるコンサル出口戦略

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 周囲に情報を発信せよ

ーコンサルからスタートアップへの移籍を成功させる人の特徴はありますか?

草間さん: 情報を得やすい人だと思います。

先程も述べた通り、私はマッキンゼーのネットワークやアセットをフル活用し、様々な巡り合わせで起業するに至りました。コンサルティングファームは優秀な人が集まるため、みんなが多様な所で活躍し、それがご縁で自分のキャリアが作られるという、シナジスティックな関係性が築きやすい環境です。

その中でも情報が得やすい人の特徴は、「情報を発信することを意識している人」だと思います。

大植さん: 情報をやりとりするにはGive & Takeの関係があって、自分が情報を出していかないと情報は入ってこないと思っています。なので私は自分から情報を発信したり、声をかけたりするようにはしています。その人ならではの情報が入ってくる人はGiveしている人ですね。

草間さん: そういう発想もありますね。私は少し考え方が異なります。前提としてマッキンゼーもBCGも結構世話焼きの方が多いです。その中で情報を得やすいのは「こういったことがしたい!」と発信している人です。普段から自分がしたいこととか助けて欲しいことを言っている人の方が、情報・助けが集まりやすい印象があります。

 今のうちからできること: VCの投資先の調査と長期インターン

ー情報を得られる体質になるために、学生時代のうちからできることはありますか?

大植さん: 投資家やVCがどこに投資していて、何が今後伸びてくるか、何を面白いと思っているのかはリサーチするのが良いと思いますね。日本のトップVCの投資先を見るとホットな業界が俯瞰して見られます。ちなみに著名な投資家はTwitterで今波が来ている業界や企業をいろいろ発信しています。Twitter等のSNSはかなり頻繁にチェックしています。

そのうえで、今BETするならここだという領域が見つかれば、その領域のスタートアップに話を訊きに行ったり、長期インターンをやったりしますね。実際私も学生時代には長期インターンしていました。

また20代半ばから30代半ばの人とは、今の仕事やキャリアの考え方の情報も得ると良いですね。彼らは皆さんの5年後10年後を経験しているので、いろいろと悩みをスキップできます。

草間さん: 視座を上げるためにも長期インターンは良いですね。学生時代の視座と社会人と仕事をして見える視座は全く異なりますよね。自力でこの視座を上げるのは至難の業なので一緒に働きながら視座を広げていけるのはすごく良い機会だと思います。

編集後記

今回は株式会社MICIN SVPの草間さんと株式会社エクサウィザーズ 取締役の大植さんに、長い目で見たコンサルティング就活の出口戦略について語っていただきました。対談の最後には、コンサルティングファームを経由して理想的なキャリアを歩むために学生の内からできることとして、「情報を得やすい環境を作り始める」という提案が出ましたが、重要な指摘だと思います。

スタートアップに飛び込むにせよ、コンサルティングの道を突き詰めるにせよ、自分が目指すキャリアに直結する情報を得に行くのは必要です。本文内では紹介していませんが、対談では「(企業名)マフィア」「アラムナイ」といった各ファーム出身者による情報ネットワークの内部で貴重な情報が回っていることが話題に上がりました。こうしたネットワークにどうアクセスして、どのような情報を得たいか今のうちから考えておくのは重要そうです。

一方で、お二方はコンサルティングからスタートアップに飛び出されたわけですが、どちらも自分の市場価値を高めるための「戦略的な思考」とその場の状況やご縁を活かす「柔軟性」を両輪として兼ね備えておられるように感じました。特にスタートアップの場合、思ってもいない時にルートが開かれることが多々あります。ですのでルートをいつでも活用できるように準備と余裕が必要だと感じました。

情報を得やすい環境を作る、あるいは準備と余裕を持つためにも長期インターンは有効です。特に将来スタートアップに転職/起業を考えている場合、スタートアップの実情や戦略などを知っておくと良いと思います。
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執筆: 穗原 充

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